骨量が少ない場合でもインプラントを可能とする「骨造成」とは

インプラントは、顎の骨にインプラント体を埋入して、顎の骨とインプラント体が強固に結合する「骨結合」によって、天然の歯とほとんど変わらない噛み心地を得ることができます。しかし、インプラント体を上顎に埋入する場合、歯を失った箇所の歯槽骨の厚みが10mm程度必要になります。しかし、場合によっては歯槽骨が吸収して薄くなってしまい、インプラント体を埋入するために必要な骨量が足りないことで、インプラント治療をおこなうことができないケースもあります。上顎の奥歯の上には「上顎洞」と呼ばれる空洞があり、歯槽骨が薄いままインプラント体を埋入すると、インプラント体が上顎洞に露出してしまい炎症を起こしてしまったり、インプラント体と骨がしっかりと結合できずに、インプラントの脱落に繋がる危険性があるからです。ただし、このような上顎の骨量が足りない場合でも、骨を増やす手術である「骨造成」をおこなうことで、インプラント治療が可能になるケースもあります。骨造成には主に「サイナスリフト」「ソケットリフト」「GBR法」があります。

骨造成の種類

サイナスリフト

サイナスリフトとは、上顎の骨の厚みが5mm以下の場合におこなう術式です。歯が生えていた部分の側面の歯茎を剥離して、骨面を露出させてから骨に穴を開けます。「シュナイダー膜」(上顎洞と歯槽骨の間にある粘膜)が露出したら、傷つけないように注意深く歯槽骨とシュナイダー膜を剥がしていき、スペースを確保してから、そこに自家骨(ご自身の骨)や骨補填剤(人工骨)を挿入します。挿入後は、取り除いた骨もしくは特殊な人工膜である「メンブレン」などで蓋をして、剥離させた歯茎を戻し縫合します。骨がしっかりできるまでに、6ヶ月〜8ヶ月程の治癒期間を設けて、骨が固くなり安定してから通常のインプラント体を埋入するインプラント治療をおこないます。

骨の増やす量や患者さんの骨の状態によっては、サイナスリフトのタイミングでインプラント体を埋入することも可能ですが、基本的にはサイナスリフトとインプラント体の埋入を別々におこないます。そのため治療期間が長くなり、インプラント体を埋入する穴とは別に歯茎を切開するので、患者さんの身体的負担も大きくなってしまいます。また、歯科医師の高度な技術と豊富な経験が必要となります。ただし、直接確認しながらおこなうことができるので、安全におこなうことができるというメリットもあります。

サイナスリフト
サイナスリフト
サイナスリフトとは 歯を失ってしまった時のためにインプラントという治療法がありますが、インプラント治療の際、患者さんの骨の状態によっては十分な骨の幅や高さがなくて、インプラント治療ができない場合があります。特に上顎の骨の上(眼下の顎骨あたり)には上顎洞(じょうがくどう)と呼ばれる大きな空洞があり、上の奥歯を失ってしまっ...

ソケットリフト

ソケットリフトは、上顎の骨の厚みが5mm以上ある場合におこなう術式です。通常のインプラント治療同様に、顎の骨にドリルで穴を開けますが、上顎洞まで1mm程度になったところでドリリングを止めます。そこから「オステオトーム」という専用の器具で徐々に衝撃を加えながら、シュナイダー膜に覆われている上顎洞を押し上げていき、自家骨や骨補填剤を挿入し、インプラント体を埋入します。

ソケットリフトは骨の移植と同時にインプラント体を埋入することができることから、サイナスリフトと比較すると、処置時間も短く身体への侵襲度も少なく、治療費用も安いので、身体的・経済的負担を軽減することができます。ただし、直接目視で確認できない処置であることから、シュナイダー膜を貫通して上顎洞に達すると、上顎洞炎という感染症を起こす可能性があります。

ソケットリフト
ソケットリフト
上顎洞挙上術(サイナスフロアエレベーション) インプラント治療は上顎洞部分にある顎の骨にインプラントを埋め込みます。しかし、歯が抜けたまま放置してしまったり、歯周病や骨吸収などで骨が少なくなってしまい、失った歯の部分の骨の高さが足りない場合、骨造成手術が必要となります。 手法としていくつかの方法がありますが、その中で、...

GBR法

GBR法は「骨誘導再生療法」とも呼ばれ、骨の幅や高さが足りない場合におこなわれる術式です。GBR法では、インプラント体の埋入と同時にGBR法をおこなう場合と、GBR法によって骨量が増えてからインプラント体を埋入する場合があります。インプラント体の埋入を同時におこなう場合、通常のインプラント治療を同様に、インプラント体を顎の骨に埋入してから、露出しているインプラント体を覆うように十分な量の自家骨や骨補填材を挿入して、メンブレンで覆います。メンブレンは歯茎などの軟らかい線維性の組織細胞と混ざるのを防ぎますが、その際にメンブレンが動かないように固定用のピンを使用する場合もあります。剥離した歯茎を縫合してから骨の再生を待ちます。術後4ヶ月~6ヶ月程度の治癒期間を経て、骨量が再生されることによりインプラント体が安定します。なお、治癒期間は術部に必要以上の刺激を与えないようにすることが大切です。

GBR法は歯茎を切開して骨を露出させるため、痛みや腫れなどを伴う可能性があります。個人差はありますが、腫れのピークは術後3日~7日程度とされています。場合によっては術後すぐに腫れだす可能性もあるので、痛みや腫れが強い場合は無理をせずに、大分県のかかりつけの歯科医院に相談するようにしましょう。

GBR(骨誘導再生法)
GBR(骨誘導再生法)
GBRとは インプラント治療の際、必要となる顎の骨。もし歯を失ってしまったまま放置してしまったり、歯周病や骨吸収などで骨が少なくなってしまい、インプラントを埋入するための十分な骨の高さや厚さが足りない場合があります。その場合、インプラントを治療するために、人工的に骨を作る骨増生手術が必要となります。骨増生手術にはサイナ...
おすすめの記事
インプラントの費用は?
インプラントの費用は?
インプラントをご検討の方で、費用を調べたり、歯科医院に尋ねた時に高額な費用にびっくりしたことはありませんか? 歯科治療において保険が適用されるのは、「歯の健康を保つための必要な最低限の治療」に限定されることから、歯を失った際に歯の機能や見た目を回復するインプラントは基本的に保険適用外治療(自由診療)となります。またイン...
銀歯が使われるのは日本だけ?
銀歯が使われるのは日本だけ?
虫歯になってしまった際に、歯を削った後に詰め物に使用される銀歯。治療費も安く丈夫であることから、現在でも銀歯を詰める治療はおこなわれています。しかし、歯科先進国の中で銀歯が主流なのは実は日本以外にほぼ無いのです。海外では虫歯の詰めものや被せものには金属を使うことはなく、基本的にレジン(プラスチック素材)などを使用して治...
インプラントのデメリット
インプラントのデメリット
急な事故や怪我、虫歯や歯周病などで歯を失ってしまった際に、歯の機能や見た目を回復するインプラント治療ですが、様々なメリットがある反面、デメリットもあります。メリットだけでなくデメリットもしっかりと理解して頂くことが、安心したインプラント治療をおこなうことに繋がるのです。 インプラントのデメリット 外科手術が必要 インプ...
インプラントの特徴
インプラントの特徴
急な事故や怪我、または虫歯や歯周病で歯を失ってしまった時の補填治療法には、インプラント、入れ歯、ブリッジ治療があります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあるため、しっかりと理解した上で、ご自身にあった治療法を選択することが大切です。 インプラント特徴 噛む力(咀嚼力) 噛む力を天然の歯とそれぞれ比較すると、イ...
妊娠と歯科治療の問題
妊娠と歯科治療の問題
妊娠をすることで、医療において様々な問題や制限が起こります。歯科治療においても例外ではありません。歯科ではレントゲンを撮ることもありますし、痛み止めや炎症止めなどの薬も処方されます。また場合によって麻酔も必要となります。妊娠をしている方で、歯科治療をおこなうことに不安を感じている方も多くいらっしゃるかと思います。妊娠と...
口内炎の知識
口内炎の知識
口内炎の症状 口内炎の症状はその原因によって大きく異なります。多くは口腔内や口唇、舌に数ミリ程度の円形~類円形の口内炎が散在します。口内炎による粘膜病変は水疱や潰瘍、びらん、白苔など多岐にわたりますが、口内炎は周辺の粘膜よりやや盛り上がり中心部はびらんや潰瘍、水疱などが生じます。周辺部は赤く充血していることが多く稀に出...
インプラントと差し歯の違い
インプラントと差し歯の違い
インプラントと差し歯の違い しっかりとした歯の根が残っていれば、誰でも治療が可能な保険適用もある差し歯とは異なり、インプラント治療は歯が折れたり抜けたりなど、歯がない場所に行う保険適用外の施術となります。 インプラント治療は外科手術を伴うため、誰でも気軽に行える治療ではありません。 しかしながら、大切な歯を失ってしまっ...
インプラント手術の危険性について
インプラント手術の危険性について
インプラント治療は失ってしまった歯を取り戻すための治療法としての人つです。多くの方がインプラント治療によって歯を失う前の生活に戻ることが出来、快適な生活を過ごされています。さらに、近年では歯を白くみせたい、綺麗な歯並びにしたい、などといった審美的治療を目的としてインプラント治療を受ける方も多くなっています。 しかし、イ...