どこが違う?インプラントと天然歯

インプラントは、失った歯の見た目や機能を天然の歯のように回復することができるため、治療によって歯が元に戻ったと思う方もいらっしゃいます。見た目の美しさといった審美面は、場合によっては治療前よりも良くなることがあります。しかしながら、天然歯と比較すると、インプラントは様々な点でどうしても劣ってしまうのです。インプラントと天然歯の違いをご説明いたします。

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インプラントと天然歯の違い

歯根膜の存在

インプラントと天然歯は構造的に異なります。インプラントは、顎の骨と直接結合する「骨結合」によって支えられていますが、天然歯は顎の骨に直接くっついて埋まっているのではなく、「歯根膜」と呼ばれる厚さは0.15mm~0.38mm程度の細かな靭帯によって支えられているのです。歯根膜は歯根と骨を繋いでいる線維性結合組織で、「歯周靭帯」とも呼ばれ一定の幅があることから、物を噛む力が加わった際に、この幅の分だけ歯が動きくことで力を分散する「クッション」のような役割をしています。しかし、インプラントにはこの歯根膜が存在しないのです。一般的に人の咬合力(噛む力)は、ご自身の体重と同じくらいといわれており、食事で食べ物を噛むたびに歯には噛む力が加わっています。歯根膜のないインプラントは、噛む力を分散することができず直接歯に伝わってしまいます。

また、歯根膜には知覚神経が存在しており、過剰な力が加わったときに反射的に力を緩めるといった働きもあります。それによって、無意識のうちに硬いものは強く噛み、柔らかいものは弱く噛むことができるのです。しかしインプラントの場合、歯根膜がないことで過剰な力が加わっても緩めることができず、直接伝わってしまうことにより、インプラントに悪影響を及ぼすこともあるのです。

歯肉線維の違い

歯茎を組織学的にみると、外側の部分を覆う「上皮」、中側の「結合組織」、歯や骨と繋がっている「歯肉線維」(コラーゲン線維)に分類されます。歯肉線維のうち、「セメント歯肉線維」、「歯槽骨歯肉線維」、「セメント骨膜線維」はそれぞれの名前の歯周組織を繋げるように走行しており、「歯間水平線維」は隣接した歯を繋ぎ、「輪送線維」は歯の周辺を取り囲むように走行しています。天然歯の場合、歯と歯茎はこの歯肉線維でくっついています。歯根面に対して垂直方向の線維があることによって、歯と歯茎が強固に付着することができるのです。しかしインプラントの場合、埋入したインプラント体に対して歯肉線維が水平方向に走行していることから、垂直方向の歯肉線維と比べると付着力は弱いため、天然歯に比べて歯茎が剥がれやすいという特徴があります。

血液供給の違い

歯根膜には血管も走行しており、天然歯には「歯根膜」「歯茎」「歯槽骨」の三方向から血流供給があります。そのため、細菌による炎症が起こった場合でも、血液中の白血球の働きによって防御反応が効果的に起こります。しかしインプラントの場合、歯根膜がないことから、血流供給が歯茎と歯槽骨の二方向だけになってしまうので、天然歯に比べて血流供給が乏しく、歯垢(プラーク)などの細菌に対する抵抗力が弱くなってしまいます。また、歯周ポケット内部には白血球の一つである「好中球」という細菌と戦う血液成分が存在し、ポケット内部に細菌が進入した際に排除する働きを担っています。血液供給が乏しいということは、好中球の出現も同様に乏しくなることから、インプラントは感染に対する防御力が天然歯に比べて弱いといえます。

インプラント周囲炎と歯周病の違い

インプラントは虫歯になりませんが、歯周病にはなってしまいます。歯周病とは、口腔内に細菌の塊である「歯垢」が溜まってしまうことで、歯茎が歯垢の中の「歯周病菌」に感染して炎症を起こす疾患です。進行すると、歯茎から歯を支えている歯槽骨にまで炎症が広がり、骨を溶かし始めます。さらに進行を続けると、溶かされ続けた歯槽骨が歯を支えきれなくなり、歯がグラグラと動揺し始め、最終的に歯が抜け落ちてしまいます。インプラントも、口腔内が不衛生になり埋入した歯茎周辺に歯垢が溜まることで、歯周病に罹患してしまうことにより、インプラントの歯周病である「インプラント周囲炎」になるのです。このインプラント周囲炎と、天然歯が罹患する歯周病には違いがあります。

初期段階の歯周病は、腫れやブラッシングの際に出血が見られますが、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。しかし、進行していくと徐々に痛みなどの自覚症状や、歯の動揺も見られるようになります。その点インプラント周囲炎は、初期段階でも腫れや出血があまり見られず、人工歯であることから自覚症状もほとんどないので、歯周病以上に気付きづらいです。また、症状の進行度合いも歯周病と比べると10倍の速度で進行するため、気付いた時には重症化していることも少なくありません。

まとめ

インプラントは口腔内が不衛生になったり、噛み合わせに問題がある場合、天然歯に比べてトラブルが起こりやすいのですが、ご自身での毎日のセルフケアを正しくおこない、定期的に歯科医院でのメンテナンスを受けることで、トラブルを未然に防ぎ、長く快適に使用することが可能です。しかしながら、ご自身の歯に勝るものはありませんので、歯を失わないためにも毎日のセルフケアと、大分県のかかりつけの歯科医院での定期的な健診や歯のクリーニングを欠かさないことが大切です。

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