蓄膿症と歯科疾患の関連について

副鼻腔炎とは、鼻の奥やその周囲にある空洞が炎症を起すことで膿が溜まってしまう疾患で、蓄膿症とも呼ばれます。風邪やアレルギーによる鼻炎から発症することが多く、一般的には耳鼻科疾患の一つといえるため、歯科の領域とは関係ないと思いがちですが、実は虫歯や歯周病などの歯科疾患が原因となって発症する場合があるのです。

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歯科疾患と副鼻腔炎との関係

副鼻腔には、「上顎洞」、「前頭洞」、「篩骨洞」、「蝶形骨洞」の4つがあり、中でも副鼻腔炎を発症しやすいのが上顎洞です。上顎洞は鼻の両側にあり、上顎の上の第二小臼歯(前から5番目の歯)を含む奥の3本の臼歯の歯根と近接しており、中には歯根の先が上顎洞の底と接触している場合もあります。そのため、奥歯が虫歯や歯周病になってしまった場合に放置をして悪化すると、上顎洞に炎症が広がり「上顎洞炎」(副鼻腔炎)を発症してしまいます。鼻からではなく、歯が原因で起こる上顎洞炎を「歯性上顎洞炎」と呼びます。

上顎洞炎の症状

上顎洞炎の主な症状として、鼻詰まり、鼻水、頭痛などですが、鼻が原因の場合は両側の鼻に症状が見られます。しかし、歯が原因で起こる上顎洞炎は、原因となる歯がある側だけに症状が見られることが多いです。また急性的な症状として、歯の痛みや頬の痛み、臭いのある鼻水が出るなどの症状があります。

歯性上顎洞炎の原因

歯が原因で起こる上顎洞炎である「歯性上顎洞炎」は、上顎洞炎全体の1~2割を占めるといわれており、原因として虫歯や歯周病のほかにも、抜歯により口腔内と上顎洞が繋がってしまい、細菌感染することで起こる場合があります。また、根管治療(歯の神経の治療)が適切におこなわれていなかったり、抜歯中に誤って上顎洞内に歯根が落ちてしまうことも原因の一つです。そのため、上顎洞と歯が近接している箇所の処置は、細心の注意を払いながらおこなわなければなりません。近年では、インプラント治療による上顎洞炎も増えています。上顎洞は、奥になるほど骨の厚みも薄くなるため、インプラント体を埋入するための十分な骨量がない状態でインプラント治療をおこなってしまうと、上顎洞を手術器具で傷つけてしまったり、インプラント自体が骨を貫通して上顎洞内まで侵入してしまう危険性があります。ですので、特に上の奥歯のインプラント治療は、レントゲンや歯科用CTなどによる事前診査を慎重におこない、骨量が足りない場合はサイナスリフトやソケットリフトなどの骨造成手術も検討することが必要です。

歯性上顎洞炎の治療

歯性上顎洞炎の治療は、一般的な副鼻腔炎と同様に先ずは抗生物質や炎症止めなどの薬を投与して症状を抑えていきます。抗生物質は2~4週間ほど投与します。ただし歯性上顎洞炎の場合、原因となる歯科疾患を治療しなければ完治させることができないため、鼻と歯の双方の治療を同時におこなう必要があります。抗生物質の投薬を受けながら、虫歯や歯周病の治療や根管治療、抜歯をおこないます。上顎洞の炎症が広範囲の場合や、膿の量が多いようでしたら、抗生物質の投与が終わった後に、抜歯した穴から膿を吸引する手術をおこないます。副鼻腔内は、直接見ることができないので診断が難しく、耳鼻科では歯との関係の診断も難しいことから、原因がハッキリしない難治性の副鼻腔炎と診断されることもあります。もしも、耳鼻科医院での治療後も副鼻腔炎が完治せず症状が続いた場合や、歯の調子が悪く左右どちらかだけ痛みがでるなどといった場合には、大分県のかかりつけの歯科医院を受診するようにしましょう。

ソケットリフト・サイナスリフト

ソケットリフト・サイナスリフトは「上顎洞挙上術」とも呼ばれる骨造成手術の一つで、主に上顎の奥歯のインプラント治療において用いられる術式です。頭蓋骨には副鼻腔と呼ばれる4つの空洞が存在しており、4つある副鼻腔のうち、歯科領域に深く関係するのが上顎洞と呼ばれる空洞です。上顎洞はちょうど鼻の横の頬のあたりに位置しており、上顎洞によって上顎は奥歯になるほど骨の厚みが薄くなります。また、上顎の歯槽骨は下顎の歯槽骨と比べて柔らかいため、歯周病による骨吸収も進みやすく、インプラント治療をおこなうための十分な骨量が足りないことがあります。このような場合に上顎洞の底の部分を持ち上げ、空いたスペースに自家骨(自分の骨)や人工骨を補うことで骨に厚みを持たせる骨造成手術のことをいいます。

上顎洞までの骨の高さが5mm以上ある場合はソケットリフト、5mm以下の場合はサイナスリフトという術式をおこないます。骨量が足りない歯の歯茎の側面を切開して人工骨を補うのサイナスリフトに対し、ソケットリフトは口腔内からオステオトームという棒状の器具を用いて上顎洞底を若木骨折させ、そこに生じた亀裂から人工骨を補います。

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