咽頭癌

咽頭癌とは

咽頭癌とは鼻の奥から食道の入り口までの範囲である、咽頭部分に発生する癌の総称のことを指します。咽頭癌は、それぞれ上から発生する場所によって、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌の順に分類されます。また咽頭癌は、癌全体の約0.5%位という、発生の頻度が低い癌の一つです。咽頭癌の発生の原因は、喫煙や飲酒、さらに熱い食べ物や辛い食べ物などの刺激の強い食べ物などが主な原因ですが、最近ではヒトパピローマウィルス(HPV)が中咽頭癌の発生に関係しているということが研究から明らかになっています。また、虫歯や破損下義歯などが常に口腔内を刺激している場合や、部位によっては貧血が癌の発生の原因になる場合もあります。

咽頭がんの主な症状は、喉の一定の場所での異物感や違和感や、リンパ腺の腫れ、鼻づまり、耳の違和感や難聴、視覚障害、食べ物を飲み込む際の痛み、声のかすれ、などがあります。しかし、発生初期段階では症状がほとんど無く、進行が進んでしまってから症状がでる場合が多いです。また、咽頭の周りには多くのリンパ節があるため、頸部のリンパ節に転移しやすいという特徴があります。癌の発見時に頸部リンパ節への転移が見つかることも珍しくはないのです。

上咽頭癌

上咽頭癌は、咽頭癌の中でも鼻の奥の部分に発症する癌のことをいいます。また上咽頭は、空間的に鼻が耳と繋がっていることから、上咽頭癌を発生すると鼻詰まりや鼻血などの鼻の症状や、耳が詰まったような違和感が生じることがあります。さらに、脳にも近いため、眼球を動かす「外転神経」と呼ばれる神経が障害を受けるなどの、脳神経症状が出ることもあります。

原因

上咽頭癌の発生の大きな原因は喫煙や飲酒です。タバコの煙やアルコールが、食べ物や空気の通り道である咽頭部分を通るため、上咽頭癌が誘発されるのです。さらに喫煙や飲酒は、口腔から咽頭一帯の癌を引き起こす原因にもなります。上咽頭癌は、発がん物質が触れた場所一帯に、がんが発生しやすいのです。中国南部や東南アジアの一部では、伝統的に食べられる塩蔵魚が上咽頭癌の発生リスクを高くする原因であることが分かっています。

検査、診察

上咽頭癌の検査は、後鼻鏡やファイバースコープを用いて病変部分を観察します。実際の診断のため疑いのある箇所の細胞を採取し、病理学的な検査を元にして診断を行います。さらに首のリンパ節に転移がないかどうか超音波検査を行ったり、肺や骨などに転移がないかCTスキャンを行ったり、MRIで癌の大きさを調べるといった検査が行われます。

治療

上咽頭癌は、話をしたり、食べ物を飲み込むなどの私たちの生活に必要不可欠な機能ある頭頸部(鼻、口、あご、のど、耳などからなる部位)の癌の一つです。そのため、患者さんが生活する上で不自由とならない治療をすることがもっとも重要となります。また、上咽頭癌は構造的・機能的に複雑な役割をする場所に発症し、 さらに脳神経とも近接しているため、いかに周囲組織を温存しつつ、癌のみを対処するかということが重要となるために、上咽頭癌の治療は放射線療法を中心に行われます。転移がみられる場合などは、抗癌剤を投与する化学療法も行います。

中咽頭癌

中咽頭とは口を開いたときの突き当たりの場所のことをいい、さらに4つの部位に分けられます。口の上部の奥にある柔らかい部分の軟口蓋と、口蓋扁桃(一般的にのどちんこと呼ばれる口蓋垂の両側にある扁桃部分)、舌の奥の付け根部分である舌根部、口の突き当たりの壁の部分です。中咽頭癌はこれらの部分に発生する癌で、初期のうちは自覚症状がみられないことがありますが、初期症状として、嚥下時のしみる感じや違和感などがみられます。症状が進行すると、食べ物を飲み込むときの違和感や喉の痛み、喋るときの違和感といった症状がみられ、消化器官からの出血による吐血や呼吸困難などの症状が出る危険性もあります。

原因

中咽頭癌は男性に多くみられます。主な原因は喫煙や飲酒です。さらにヒトパピローマウィルス(HPV)が中咽頭癌の発生に関係しているという研究報告が増えているため、治療方針にも変化が起きています。

検査、診察

中咽頭癌の診断には視診と触診、さらにファイバースコープによる観察を行い、癌のあることが明確な部分、または疑いのある部分から組織を採取し、生検(病理組織検査)により診断を行います。中咽頭癌と診断された場合、癌の転移や病変の広がりの範囲を正確に知るためにCTスキャンやMRI、さらに最近ではPET検査(陽電子放射断層撮影)などの画像検査を行い治療の方針を決めます。

治療

中咽頭癌は放射線療法が効果的な癌です。しかし抗癌剤は上咽頭癌と比べ、効き目が悪くなるため、化学放射線療法を行うことが多いです。また手術による治療の際は、癌とリンパ節の切除が中心となります。切除することにより飲み込むことや発声の機能が失われる場合は、再建手術により体の別の組織を移植し、機能を出来るだけ保つようにします。

下咽頭癌

下咽頭は、咽頭のもっとも下の部分で、食道と中咽頭、気管とつながっている喉頭の後ろに位置しています。下咽頭は、空気や飲食物の通り道になります。飲食物が通るときには、喉頭が上がることによって喉頭蓋が喉頭への通り道を塞ぎ、飲食物が喉頭から気管の中に入らずに、うまく食道へと通過させる働きをします。この下咽頭部分にできた癌を下咽頭癌といいます。

さらに下咽頭癌は発生部位によって、梨状陥凹癌、輪状後部癌、咽頭後壁癌の3つに分類されます。全体の約7割が梨状陥凹癌で、約2割が後壁癌、残りが輪状後部癌という割合です。また下咽頭は喉頭に近いため、下咽頭癌が発見されたときには、喉頭まで癌が広がっていることもあります。

初期のうちは特別な自覚症状はなく、飲食物を飲み込む際の違和感や閉塞感があります。癌が進行していくと喉の痛みが出る場合があり、飲み込む際、しみたり、切られるような痛みを出るようになり、進行が続くと喉の痛みが強く、血痰や声枯れ、飲み込む際の嚥下障害や呼吸困難など多くの症状が出現します。また頸部リンパの腫れが最初の症状となっているものが2割ほどあることも特徴です。

原因

梨状陥凹癌や咽頭後壁癌は、長年にわたる喫煙や飲酒による慢性的な刺激が大きな原因だと言われており、男性に多くみられます。輪状後部癌は、慢性の鉄欠乏性貧血が関係していると言われており、女性に多くみられます。

検査、診察

ファイバースコープにより下咽頭を観察し、癌の疑いがある場合には組織を採取し、生検により診断を行います。ファイバースコープだけでは診断が難しい場合もあるため、その場合はバリウムやCTスキャン、MRIといった画像検査を行います。それでも、初期段階に診断をつけるのが難しいケースもみれらます。

治療

下咽頭がんの治療法には、放射線療法と手術療法があります。化学療法は放射線療法や手術の補助療法として行われます。下咽頭は、声帯がある喉頭が隣に位置するため、下咽頭癌が進行すると喉頭まで癌が進展します。そのため手術による下咽頭の切除では、嚥下障害や喉頭摘出することによる発声障害などのQOL(生活の質)の低下は避けられません。そのため、QOLの低下を最小限にし、予後を改善していくための治療法を選択することが重要です。

一般に、早期癌には放射線療法、進行癌には手術療法が中心に行われます。しかし、手術による喉頭切除に伴う失声のためQOLの低下は免れないため、最近では、喉頭を温存した手術が行われるようになりました。しかし、未だに適応が限られており、全ての手術に行うことが出来る術式ではありません。頸部のリンパ節転移においても癌の場所にあわせ、放射線療法や頸部郭清術が行われます。これらの治療の選択は患者さんと医師によって決めます。

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