インプラントと骨粗鬆症

骨粗しょう症でもインプラント治療は可能?

骨粗しょう症に罹患していると骨密度が低下します。きちんと骨の状態を検査した上で適切な治療を行うことが必要となります。それでもインプラント治療への影響は少ないとされており骨粗しょう症でもインプラント治療は十分可能です。また、骨の量が少ない場合でも骨を移植したり再生させる治療法もあります。

骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症を一言でいうと「骨がもろくなる」という状態になります。もう少し正確に言うならば「骨量の減少、骨質の劣化」が起こり骨折しやすい状態の事をいいます。日本国内で骨粗しょう症の方は1300万人いると言われており(2015年日本骨粗鬆学会推計)、「日本人11人に1人は骨粗しょう症」という計算になります。骨粗しょう症の治療をおこなう場合は整形外科で行なうことが多くなります。

骨を強くして骨折しにくくするためにビスフォスフォネート製剤という薬を使用することが多いのですが、非常に効果的な薬(効果が高く副作用が少ない)である反面、同時並行して歯の治療をおこなう場合は注意が必要となります。(※ビスフォスフォネート製剤を服用されている方は約200万人と推定されてます。)人体の骨は固定しているわけでなく絶えず入れ替わっていて、「活性化→骨吸収→逆転→骨形成→休止」というサイクルで代謝しています。そのサイクルの中の「骨吸収」の役割を果たす「破骨細胞(はこつさいぼう)」を自然死させ骨吸収を抑制するのがビスフォスフォネート製剤です。

ビスフォスフォネート製剤を使用されている方

骨粗しょう症の治療のために服用している薬がビスフォスフォネート製剤の場合、用量や服用期間によってはインプラントと骨との結合に影響して治療の成功率が下がる可能性があります。ビスフォスフォネート製剤を服用中に抜歯などの外科処置を行うと抜歯後の穴が埋まらずに骨が露出し、顎の骨が腐ったり(骨壊死)炎症が悪化する等の副作用が出る事があります。

このビスフォスフォネート製剤は骨の代謝を抑える事で骨からカルシウムが出て行くのを防いでいますが、同時に新しい骨や軟組織(歯ぐきなど)を作る機能も抑制されます。そこから細菌が感染することによって傷が治りにくくなり骨が腐る等の副作用が起こる場合があります。ビスフォスフォネート製剤を服用中は抜歯などの外科処置、義歯の装着、歯周病、縁の尖った被せ物などには十分に注意が必要です。

骨粗しょう症の方がインプラント治療を受ける時の注意点

骨粗しょう症の方が歯の治療を行って顎の骨が腐る「顎骨壊死(がっこつえし)」を発症するケースが年々増えてきています。一度なってしまうと治りにくいため長期化して日常生活に大きく支障がでてきます。2003年に骨粗しょう症の方が歯の治療をした際に骨隨炎(骨の炎症)、顎骨壊死(顎の骨が腐る)ケースが報告されたのを契機に特に抜歯やインプラントなどの治療に際して注意が必要と言われ始めました。

特に骨を強くする(骨折予防のため)お薬で良く使用されているビスフォスフォネート製剤を飲まれている方に起きるものを「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(がっこつえし)」と呼ばれ、発生頻度は低いものの通常の骨髄炎と比較すると治りにくい(長期化する)ため特に注意が必要になります。

日本は長寿社会であり骨折予防のためのお薬を飲まれている高齢者の方が多くなってきています。また、がんの治療にも注射で骨吸収抑制薬を使用することがあります。では歯科治療にて抜歯をした場合の顎骨壊死はどれくらい起きるのでしょうか?日本国内での発生頻度は薬の使用法で違いがありますので一概には言えませんが、抜歯した場合の顎骨壊死の発症は飲み薬で0.5%以下、注射薬の場合で1.6~14.8%程となっています。上記の数字のように飲み薬の場合は極めて発生頻度は小さい事が分かります。ただし、注射薬で使用している場合は発生頻度が上がるというのは注目すべき点です。

近年(2016年)では他の種類の薬でも起きることが分かってきて骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)とまとめて呼ばれています。定義としてはビスフォスフォネート製剤、デノスマブ(骨粗しょう症、がんの治療薬)による治療歴(服用薬、注射薬)があり、放射線治療をしていない、癌転移もなく8週間以上持続して骨が露出しているものを「ARONJ」としています。

抜歯以外にも顎骨壊死のきっかけになる歯科治療はあります。内訳としてはやはり抜歯が断トツで62%となり、その他の外科処置やインプラントなどの外科処置関連で7割を占めることが分かっています。注目する点は自然に発生したり歯周病や入れ歯の不適合など通常の歯科治療でも起きるところです。つまり歯を抜かない場合でも油断は禁物と言えます。

【顎骨壊死のきっかけとなった歯の治療】
外科処置/抜歯(62%)
外科処置/インプラント(4%)
外科処置/その他外科処置(7%)
通常治療/入れ歯が合わない(7%)
通常治療/自然発症(15%)
通常治療/歯周疾患(5%)

上記の数字でも分かる通り、特にインプラント治療に注意が必要という事ではありません。ビスフォスフォネート製剤を使用している場合には外科処置を行なわない方が賢明と言えますが、自然発症も含めて注意する必要があると言えます。

インプラント治療で副作用を起こさないために

ではビスフォスフォネート製剤を使用している方はインプラント治療のときにどうすれば良いのでしょうか?まず歯科の先生に「骨を強くする薬を飲んでいる」などの報告を忘れないようにしましょう。初めての受診時には通院している病院や飲んでいるお薬などについて聞かれるかと思いますが通院途中からお薬を飲み始めた場合は担当の先生も分かりません。

その場合は担当の歯科医師に速やかに報告することが必要です。くれぐれも歯科医師がビスフォスフォネート製剤を使用している事を「知らないまま抜歯」等という事にならないようにしましょう。そのため抜歯などの外科処置を行う前後にビスフォスフォネート製剤の服用を中止して頂く場合があります。場合によっては高次医療機関へ紹介させて頂くこともあります。副作用自体はお口の中の細菌が原因で起こりますので、お口の中を普段から清潔に保つことが重要です。

また、治療が終了した後も定期的な検診をお勧めします。

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