スポーツと歯の関係

近年、スポーツの際にマウスガードなどをつけて試合に臨んでいる選手をよく見かけます。実はスポーツと歯は、大きく関係をしているのです。中でも噛み合わせは大きな役割を担っています。スポーツで様々な力を入れる瞬間に、噛み合わせがパフォーマンスに影響しているのです。

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正しい噛み合わせ

不正咬合などの悪い歯並びによって、噛み合わせは悪くなりますが、実は虫歯や歯周病も噛み合わせが悪くなる原因の一つなのです。虫歯が進行して炎症を起こすと、歯に痛みが生じてくるため、食べ物を噛む際に虫歯の歯を避けて噛むようになります。そのため咀嚼のバランスが偏ってしまい、徐々に噛み合わせが悪くなってしまうのです。噛み合わせが悪くなると、顎がバランス良く動かなくなるため頭の重心がずれてしまい、体が不安定な状態になります。重心がずれた体はバランスを取ろうとして、別の部位に負担をかけてしまうので、肩こりや腰痛、首の痛みなどを引き起こす原因となってしまいます。

正しい噛み合わせは、スポーツに必要なバランス感覚に繋がっているということもわかっています。さらに一部の競技では、しっかり奥歯を噛みしめることでより大きな力を引き出すことができるともいわれています。姿勢を安定させて集中することで、パフォーマンスを引き出すライフル射撃やゴルフ、ボートなどの選手では、一般の人の3倍の咬合力があることが分かっています。このように、正しい噛み合わせとスポーツは大きな関わりがあるのです。

スポーツ選手は虫歯のリスクが高い

スポーツを職業としているプロのアスリート選手などは、体やパフォーマンスを維持するため、多くのカロリーを必要とするため、食事の回数も多く、さらに糖分の多い飲み物なども多く摂取しているために、虫歯になるリスクも高くなってしまいます。さらに、海外遠征などがある場合、高度を飛ぶため気圧が変わる飛行機の中で、虫歯などから引き起こされる「航空性歯痛」を起こす場合があります。歯の神経である歯髄が、気圧の変化の影響を受けて痛みが生じるのです。そうなると、試合で出場しても痛みで集中できず、さらに力を込めて噛めないために、質の高いパフォーマンスをすることができないといったことがあるのです。そのためスポーツ選手などのスポーツに取り組んでいる人は、ご自身での口腔内のケアや、歯科医院での定期的メンテナンスがより重要となるのです。

スポーツと歯の関係

スポーツと歯の関係において、スポーツ歯学という分野があります。スポーツ歯学は、スポーツ医学における歯科分野のことで、スポーツにおいての歯科的に見た外傷の治療や予防などをおこなう以外にも、歯科的な目線から個人のパフォーマンスを最大限に発揮できるようにすることを目的としています。また、歯科治療での投薬がドーピング検査の対象となる成分を含まないように配慮するといったこともおこないます。

スポーツ歯学の具体的目標は

  • スポーツによる住民の健康・安全づくりを支援する。
  • 顎顔面口腔領域でのスポーツ外傷を予防する。
  • スポーツ競技力の維持・向上をサポートする。

の3つが掲げられています。近年のスポーツの目標は、従来のパフォーマンスの向上だけではなく、健康の保持や増進によって、快適な生活を健康に送ることができるというQOL(生活の質)の向上を目指す大きな役割を担っているのです。

マウスガード

マウスガードは、スポーツなどで受ける外部の衝撃から、口腔内を守ったり、脳などへの衝撃を和らげる働きをするもので、以前はマウスピースとも呼ばれていました。マウスガードは、弾力性のあるやわらかい素材でできており、通常上の歯に装着します。ボクシングやアメリカンフットボールでは装着が義務化されていますが、これは衝撃で舌や口の中を傷つけるのを防止したり、ショックを吸収する事を目的としたものです。最近では運動能力の向上や、体の軸のブレを抑える働きがあることがわかってきていることから、マウスガードの装着がより身近になっています。また、力を入れる際どうしても歯を食いしばってしまうという人は、歯や顎の関節を痛めやすいため、それらを軽減するためにも効果的です。さらに、特定のマウスガードには顎を正しい位置に固定しやすくなったり、噛み合わせを矯正する効果もあります。マウスガードによる効果は個人差もありますが、握力などの静的筋力が増強したり、噛み締めのバランスが良くなるので平行能力が改善したり、噛み合わせを高くすることで、脱力感を得ることができるので疲労しにくくなる、といった効果も期待できる場合もあります。

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