唾液腺炎

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唾液腺炎とは(主要な症状など)

唾液腺炎とは、耳下腺や顎下腺などの唾液腺に炎症を起こした状態の総称であり、その原因は多岐に渡ります。原因の多くは唾液腺の細菌感染や結石による閉塞または腺の分泌低下が原因といわれており症状は腫脹、疼痛、発赤、および圧痛となります。いずれの原因であっても耳下部、顎下部といった唾液腺が腫脹します。細菌性感染やウィルス性感染では痛み・発熱、流行性耳下腺炎では合併症として髄膜炎や睾丸炎、難聴などを引き起こすことがあります。唾石症、狭窄症、繊維素性唾液管炎、シェーグレン症候群では反復する唾液腺腫脹が確認されています。なお、シェーグレン症候群やIgG4ミクリッツ病では口腔内の乾燥や味覚障害、特にシェーグレン症候群では目の渇き、陰部の乾燥が特徴的です。IgG4関連ミクリッツ病は涙腺や唾液腺の左右対照的な腫脹が特徴的です。なお全身の自己免疫疾患を伴う場合は、IgG4関連自己免疫疾患に分類される事となります。

唾液腺炎の原因

唾液腺は大唾液腺・小唾液腺に分かれています。大唾液腺には耳下腺・顎下腺・舌下腺があり、このうち主に炎症を起こすのは耳下腺と顎下腺です。炎症を起こす原因は多くあり、主に下記のようなものがあります。

【細菌感染】

口の中が不衛生な状態もしくは唾液の分泌量が低下している場合に生じます。口の中の細菌が唾液腺管を介して唾液腺感染を引き起こします。

【ウィルス性感染】

ムンプスウイルスによる流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)が代表的です。

【唾液腺管の狭窄や閉塞】

唾液腺管に石が詰まる唾石症や何らかの原因で管が細くなる唾液腺管狭窄症などがあります。

【アレルギー性疾患】

線維素性唾液管炎では唾液が出るところから白色の細長い塊が排出されて詰まるため唾液腺が腫れます。木村病ではアレルギーにより両側の耳下腺が腫脹します。

【自己免疫性疾患】

自己抗体により唾液腺が腫脹します。シェーグレン症候群やIgG4関連ミクリッツ病などが該当します。

【HIV関連疾患】

HIVに伴って起こる唾液腺疾患です。主にのう胞やその内部に膿を伴う膿瘍が耳下腺内にできます。

【小児反復性耳下腺炎】

10歳ぐらいまでに繰り返し起こる耳下腺炎です。原因はよく分かっていません。

その他にも稀ではありますが結核、梅毒および放線菌などが唾液腺に感染を起こして唾液腺炎が発症することもあります。

唾液腺炎の治療

唾液腺炎の診断は臨床的に行います。主にCT、超音波検査、およびMRIを使用して唾液腺炎の原因の特定を行います。治療には抗菌薬を用いますが各疾患に応じた治療を行います。

【細菌感染】

抗菌薬を使用します。口腔内が不衛生なら口腔ケア、唾液が少ない場合は唾液腺の分泌を促す薬を使用するなど必要に応じてケアや治療を実施します。

【流行性耳下腺炎】

自然軽快が期待できるため熱や痛みへの対症療法が中心の治療となります。全身合併症に注意し適宜検査を行います。

【木村病】

抗アレルギー剤やステロイドホルモン剤を投与します。

【IgG4関連疾患やシェーグレン症候群】

IgG4関連疾患ではステロイドの投与を行います。シェーグレン症候群ではステロイドの効果が乏しいため、症状にあわせて対症療法をおこないます。

【小児反復性耳下腺炎】

年齢とともに頻度が減少し、10歳ぐらいには自然消失します。それまでの間は腫脹時に対症療法を行います。

唾液腺炎の診察や経過について

唾液腺炎のような症状に該当してご心配な方は内科のクリニックや耳鼻科、または口腔外科の受診をお勧めします。唾液腺炎の診断は基本的には診察で行います。腫瘍など他の病気が疑わしい場合には頭部CTや頭部MRIを行う事もあります。唾液腺炎の治療はその原因によって変わってきます。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)が原因で唾液腺炎になる事がありますが、そのような場合は解熱薬などの対症療法のみで自然に回復してくるのを待ちます。そうでない場合でも抗生物質など内服薬で治療できるものがほとんどです。このような内服治療であれば一般的な内科のクリニックで行える治療です。特殊な原因のものや他の病気と見分けが難しいもの、あるいは通常の治療で治らない原因などの場合には口腔外科を受診すると良いでしょう。

 

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