口腔心身症

歯科(口腔)心身症とは

歯や歯茎、舌や口唇など口に関連する器官の感覚に異常が現れていると思っているのに、治療してもなかなか改善せずに原因が分からないということがあります。こうした患者さんの中には、歯科(口腔)心身症の疑いがある場合があります。

歯科の治療対象の場所である口、顔、顎には、知覚神経が多く存在します。口唇や口の中の粘膜は触覚や痛覚にとても敏感で、舌はさらに味覚も感じます。さらに、歯も歯の根の周りの神経感覚もとても敏感です。

歯科心身症により、この口、顔、顎にある神経感覚が過敏になったり、感覚の錯誤が起きるのです。患者さんは歯や歯茎、舌や口唇などに問題があると強く思っていますが、その部位の治療では本来の症状は改善しないのです。また、患者さんに現れる症状にもいろいろなケースがあります。歯科心身症は、近年普及しつつある考え方で、口の中の異常が心因的な要因となっている病態のことをいいます。

歯科心身症の約半数を占めるのが、舌の先や縁がヒリヒリ、ピリピリと痛む症状がみられる舌痛症です。時には火傷をしたような強い痛みを感じる場合もあります。また、口の中がネバネバ、ザラザラするといったことや、口腔乾燥や味覚異常などの口の中の異常を口腔内異常感症といい、心因的な要因から引き起こされる場合があります。

さらに虫歯や歯の周囲に異常はみられないのに、慢性的に歯の痛みを感じるという現象を非歯原性歯痛といい、不安やストレスなどの心因的な要因により、引き起こされることがあると考えられています。

歯科(口腔)心身症の原因

歯科心身症の原因はストレスや自律神経のバランスが崩れる自律神経失調症などであるので、歯科医師が口の中の症状を改善しようとしても、原因が分からず、何度も再発して治りません。 以前の医学では、病気の元となる原因を見つけ、それを治療することによって病気を治すという考えでした。しかし、それでは異常がみられない場合、治療することができないため、口腔心身症の治療は難しいものでした。

脳の中には視床下部という部分があります。視床下部は、体の状態を正確に調整するための情報を流れてくる血液中に含まれる物質の変化から感じ取り、調整するための指令を出します。強いストレスを感じると、自律神経の中の交感神経が優位になるため、血管が収縮するため、視床下部に流れてくる血流量が少なくなります。その状態が長く続くと、その状態を正しい身体だと視床下部が誤認識してしまい、誤作動が起きた状態になってしまいます。 その症状が口腔心身症なのです。流れてくる血流量が少なくなるため、全身への血液の供給が不十分になるため、体のだるさや疲労感、肩こりや体温の低下や睡眠障害、食欲不振といった不定愁訴の状態になります。

また、口はストレスの発散場所です。体は寝ている間に歯ぎしりや食いしばりなどでストレスを発散させようとしますが、それが長期間続くと歯の違和感や口内炎、舌痛症などの症状が現れてしまったり、噛みしめ過ぎて筋肉が凝り固まってしまい、筋肉の痛や肩凝りになってしまいます。

歯科(口腔)心身症の治療法

歯科心身症の治療法としては、 投薬による薬物療法と認知行動療法が効果的だといわれています。薬物療法では、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質が不足した際に、関与する神経細胞受容体に作用し、遊離するノルアドレナリン、セロトニンを増やす役割をする「三環系抗うつ薬」が効果的だといわれています。抗うつ薬には慢性疼痛に効果を発揮するということもあり、痛みの緩和を目的に処方します。ただし、認知症の傾向がある方の場合、安易に処方してしまうことで、認知症の症状を進行させる可能性があるため、その場合は漢方薬に切り替えることもあります。

認知行動療法とは心理療法の技法のひとつで、誤った認知や陥ってしまいがちな思考パターンの癖を客観的でより良い方向へと考えを変えていくことを目指す方法です。

しかし薬で痛みが軽減してもこのままずっと治らないのではないか?などといった心の不安が残ってしまう方も多いため、その場合は認知行動療法などを併用して治療します。

薬物療法や認知行動療法により、7~8割の方は症状が改善しているといわれていますが、心因的な要因が問題となるだけに治療が難しく、100%の完治できない場合が多いです。ですので治療の目標を、痛みのない日常生活にするというよりは、痛みが苦にならない日常生活にして、同時に痛みをはじめとした症状と、うまく付き合っていくということを患者さん自身で受け入れてもらうことが現実的であるといえます。

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