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歯原性歯痛と非歯原性歯痛
口腔内やその周辺に起こる痛みは、症状が軽度なものから、激しい痛みを伴うものもありますが、たとえ軽い痛みであっても不安がつきまとってくるものです。これらの痛みの多くは、「歯原性歯痛」といわれる歯が原因となる歯痛です。歯原性歯痛は、歯の中の神経である「歯髄」や、歯の周りの歯を支える組織である「歯周組織」に何らかの問題がある場合に起こる痛みであり、歯科医院での治療によって治まる痛みです。
しかし、場合によっては歯が痛いのに歯科医院で診てもらっても、口腔内に虫歯などが見られないといったことがあります。この痛みのことを「非歯原性歯痛」といい、様々な原因があるため、痛みの原因によって分類されます。
非歯原性歯痛を歯科医院で治療する場合、歯の痛みの根本的な原因は除去できないため、痛みは解消されません。しかし、非歯原性歯痛が起こる原因の中には、周期的に痛みがおさまるものがあるため、痛くない期間に歯の治療をおこなった場合だと、歯の治療で良くなったように感じてしまいます。しかし、原因は解消されていないため、痛みが続くので、さらに歯の治療を続けることになってしまいます。場合によっては、歯を削ったり、歯の神経を取ったりしてしまい、最悪の場合は歯そのものを抜いてしまうといった危険性もあるため、治療においても非歯原性歯痛の知識を持った歯科医院での治療を受けることが重要なのです。
非歯原性歯痛の原因
筋・筋膜性歯痛
筋・筋膜性歯痛とは、食べ物を噛むときに使う咀嚼筋などが疲労してしまうことで、筋肉中にトリガーポイント(痛みの発生源)である「しこり」ができてしまい、トリガーポイントから関連痛が発生することで痛みを感じる非歯原性歯痛です。関連痛とは、痛みの原因から離れた別の場所が痛みを感じることをいいます。主に上下の奥歯に痛みを生じやすく、鈍い痛みを感じることが多く、1日中痛む場合もあれば、痛みに不定周期がある場合もあります。筋・筋膜性歯痛の大きな特徴として、トリガーポイントのしこりを指などで押すと強い痛みが生じ、このトリガーポイントを5秒程度押し続けると、歯痛が起こります。
治療法として、筋肉のストレッチやマッサージによって筋肉の血流を良くすることで、解消していく方法があります。急性の場合であれば、消炎鎮痛剤を服用することもあります。
神経障害性歯痛
神経障害性歯痛は、末梢神経から中枢神経が障害を受けた際に生じる痛みという、神経障害性の歯の痛みです。主に2つのタイプに分けられ、三叉神経の痛みが原因で引き起こる強い痛みの「発作性神経障害性歯痛」と、もう一つは代表的な原因が帯状疱疹や、帯状疱疹の後遺症などに引き起こされる「持続性神経障害性歯痛」です。神経周囲の炎症や腫瘍、骨折によって神経が障害されることが原因で神経障害性歯痛が起こる場合もあります。
治療法は、発作性神経障害性歯痛には、薬物療法や脳神経外科での手術、神経ブロックやγナイフ治療など、疾患の原因に合わせて治療をおこないます。
持続性神経障害性歯痛の場合、ウイルス由来の神経の炎症と考えられているため、抗ウイルス薬(塩酸バラシクロビル、アシクロビル)を使用し、神経の炎症には非ステロイド性抗炎症薬やステロイドを服用します。慢性化した持続性神経障害性歯痛には、疼痛治療剤(プレガバリン)と抗鬱薬の一部を投薬します。
神経血管性歯痛
神経血管性歯痛は、片頭痛や群発頭痛の症状の一つで、頭痛の関連痛として起こる歯痛です。歯の神経の炎症と痛み方が似ているため、判別が難しい歯痛の一つです。神経血管性歯痛が原因での痛みの場合、歯の治療をおこなっても効果がないため、頭痛専門の医療機関を受診し、頭痛の治療をおこなうことが重要です。
上顎洞性歯痛
上顎の骨の中にある副鼻腔の空洞が炎症したり、腫瘍がある場合に引き起こる関連痛です。副鼻腔は風邪などのウイルスが原因で炎症を起こすことがあるため、鼻からの影響で起きている上顎洞歯痛は、耳鼻咽喉科で治療をおこないます。
心臓性歯痛
狭心症や心筋梗塞などの心臓の疾患が原因で起こる関連痛です。運動時や興奮時、食事時に歯の痛みが発作性に生じます。この場合、迅速に心疾患の治療をおこなうことが重要であり、早急に心臓専門の医療機関を受診することが大切です。
精神疾患または心理社会的要因による歯痛
不安や気分が落ち込む抑鬱といった、精神疾患の中の身体表現性障害として歯の痛みを生じることがあります。心理社会的要因が背景にあって起こるため、精神科での対応が必要な疾患です。
特発性歯痛
色々な検査をしても明らかな原因がわからない歯痛で、「原因不明の痛み」といえます。歯原性歯痛ではなく、さらに非歯原性歯痛のどの分類にも明確に当てはまらない歯の痛みですが、時間の経過と共に症状が変化していき、原因が明確になることもあります。
その他のさまざまな疾患により生じる歯痛
悪性リンパ腫、肺癌、血管炎、良性腫瘍、頸椎の異常,迷走神経反応,薬の副作用などの疾患が原因で起こる歯痛です。
検査と診断
非歯原性歯痛の診断には、虫歯や歯周病などの口腔内の問題がないかを問診や視診、X線検査などで調べます。もしも歯や歯周組織に問題がない場合は、非歯原性歯痛の8つの原因にあてはまる症状がないかを、詳しい問診や触診、CTやMRIなどの検査をして原因の特定をします。ただし、非歯原性歯痛の検査は、専門医がいない歯科医院ではおこなっていないことがあるため、疑いのある方や心配な方は、一度大分県のかかりつけの歯科医院で、非歯原性歯痛について聞いて頂くことをお勧めいたします。