高齢者の歯科治療

高齢になると、歯を失ってしまうことが多くなるのですが、高齢になるから歯を失うのは仕方ない、と思っている方も多くいらっしゃいます。しかし、高齢の方でもご自身の歯が20本以上残っている方もいます。それでは、この歯の残存数の違いは一体何なのでしょうか。大きな違いとして、歯を失っている方の多くが歯周病にかかっているなどの、口腔内にトラブルが起こっていることが原因で歯を失っているのです。口腔内のトラブルになる要因として、正しい歯磨きができていなかったり、虫歯や歯周病になっているのに歯科医院で治療せず、そのまま放置していたり、定期的に歯のクリーニングをおこなっていないということが挙げられます。歯を失ってしまった場合にも治療せずにそのまま放置している方も多く、それが原因で様々な体のトラブルも起きている場合があります。

それでは高齢者の歯の問題が引き起こす、口腔内や体のトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。また失った歯を補う治療法はどのようなものがあるのでしょうか。ご説明いたします。

歯の問題が引き起こす口腔内のトラブル

歯周病などで歯を失ってしまった場合、そのまま放置してしまうと口腔内に様々なトラブルが起こります。

胃腸などに負担がかかる

失ってしまった歯を治療せずにそのまま放置してしまうと、隣の歯が徐々に空いたスペースに傾いてしまいます。それによって噛み合わせが悪くなってしまい、食べ物をしっかりと噛むことができなくなるため、咀嚼の効率が悪くなり胃腸などの消化器官に負担がかかってしまいます。

虫歯や歯周病になるリスクが高くなる

失った歯の部分に隣の歯が傾いていまうことで歯並びも悪くなってしまいます。歯並びが悪くなると、歯磨きなどで歯ブラシが磨きにくい場所が出てきてしまうため、磨き残しが起きてしまい虫歯や歯周病になるリスクが高くなってしまいます。特に高齢者の歯周病は全身疾患を引き起こす危険性もあるため注意が必要です。

歯周病のリスクと対処方法
歯周病のリスクと対処方法
歯周病とはどんな病気? 歯周病とは細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいるとそこに多くの細菌が停滞して(プラークの蓄積)歯肉の辺縁が炎症を帯びて赤く腫れたりします。そして進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなって歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯...

ドライマウスを引き起こす

噛み合わせが悪くなると咀嚼がしにくくなるため、唾液の分泌量が減ってしまいます。唾液の分泌量が減ってしまうことによって口腔内が乾燥してしまい、ドライマウスになってしまいます。ドライマウスは口臭を引き起こしたり、味覚異常や、舌や口の粘膜に痛みを感じるといった症状が見られます。

高齢者の歯のトラブルなどが招くさまざまな病気

高齢者が引き起こす最も多い歯の問題は、歯周病です。歯周病は、進行してしまうと全身が歯周病菌に侵されてしまうという恐ろしい病気なのです。歯周病が進行してしまうと、歯と歯茎の隙間から歯周病歯が侵入してしまい、歯根に通っている血管の中にまで入り込んでしまうと、体全身に菌が回ってしまい体に様々な悪影響を及ぼしてしまいます。

歯周病が原因で引き起こす疾患として、糖尿病があります。糖尿病は歯周病の合併症だといわれており、糖尿病の方はそうでない方と比べると、歯肉炎や歯周炎にかかっていることが多いという結果報告もされています。さらに、歯周病になると糖尿病の症状が悪化したり、逆に歯周病を治療すれば、糖尿病も改善されるということが分かっています。その他にも、狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患や、脳の血管が詰まってしまう脳梗塞なども歯周病を関係しています。また歯周病によって歯を失ってしまうことが、アルツハイマー型認知症にも関係していることが分かってきています。アルツハイマー型認知症は脳が萎縮するのが特徴ですが、歯の数が少ない方ほど脳の委縮が進んでいるということもわかっています。

高齢者のインプラント治療

歯を失ってしまった場合、入れ歯やインプラントによって補うことができるのですが、高齢者のインプラント治療は場合によっては治療が受けられない場合があります。基本的に年齢制限はないのですが、インプラント治療は手術を伴うため、手術に耐えられるだけの体力や健康状態が重要になります。また、歯を失ってもそのまま放置していると、その部分の顎の骨が徐々に痩せてしまいます。高齢になるにつれて骨は痩せていくのですが、インプラント治療の際にインプラント体を埋入するだけの十分な骨の量や高さが足りなくなってしまうこともあるため、治療をおこなうためには骨を増やす手術が必要になってしまいます。

入れ歯よりもしっかりと食べ物を噛むことができ、脳にも直接刺激を伝えることができるインプラントですが、高齢者の場合、入れ歯からインプラントに変える方も多くいらっしゃいます。入れ歯の場合、顎の骨に直接結合していないため脳に刺激が伝わらないため、脳が萎縮し認知症を発症することもあります。そのため、外した入れ歯が何処にあるか分からなくなったなどのトラブルも起きています。

本来はご自身の健康な歯を残すことが最も理想的であり、心と体の健康にも大きな影響を与えます。しかし、どうしても失ってしまった歯は元には戻りません。その時にインプラント治療をおこなうことで快適な生活を取り戻すことも可能なのです。今後インプラント治療をお考えの方は、一度、大分県のかかりつけの歯科医院でのカウンセリングを受けていただくことをお勧めいたします。

おすすめの記事
インプラントの費用は?
インプラントの費用は?
インプラントをご検討の方で、費用を調べたり、歯科医院に尋ねた時に高額な費用にびっくりしたことはありませんか? 歯科治療において保険が適用されるのは、「歯の健康を保つための必要な最低限の治療」に限定されることから、歯を失った際に歯の機能や見た目を回復するインプラントは基本的に保険適用外治療(自由診療)となります。またイン...
インプラントの種類
インプラントの種類
インプラントとは 通常インプラントは、歯には根と呼ばれる歯の土台を支える部分があります。歯を失うと根がなくなるためまずはその根を作る作業が必要になってきます。インプラントには多くの種類があり、大分の歯科医院によって取り扱うメーカー・種類を取り扱う製品は異なってきます。インプラントは頬の骨に埋め込む「インプラント(人工歯...
インプラントから膿が出てきた場合の対処法
インプラントから膿が出てきた場合の対処法
インプラント治療後に膿が出ることがあります。通常、天然の歯の歯茎から膿が出てきた場合は、歯周病(歯槽膿漏)が原因によるものですが、インプラント治療後に膿が出た場合の原因はどうなのでしょうか。インプラントから膿が出てきた場合の原因と対処法についてご説明いたします。 歯茎から膿が出るとは 皮膚を怪我してしまった場合に、悪化...
安心してインプラント治療を受けるには
安心してインプラント治療を受けるには
安心してインプラント治療を受けるには インプラント治療は顎の骨にインプラント体を埋入するといった外科的手術を必要とするため、どうしても治療自体に不安を抱いている方は多いのではないのかと思います。しかし近年のインプラントは不安のイメージを取り除くよう、医療設備の充実や歯科医師の技術や研究など、歯科医療の向上に力を入れてい...
インプラントで使用されるパーツ
インプラントで使用されるパーツ
インプラントとは人工の材料や部品を体に入れることの総称です。インプラント治療は失った歯の機能や見た目を取り戻す治療法で、複数のパーツを使って治療を行いますので高度な技術が必要になります。 大分県でインプラント治療をお考えの方は症例数、設備など信頼のおける歯科医院を探すことが大事になります。インプラント体は人工歯の歯根の...
インプラントのオーバーホール
インプラントのオーバーホール
インプラントのオーバーホールとは インプラントは、失った歯の機能や見た目を回復することができる治療法ですが、長く快適に使用するためには、定期的に歯科医院でのメンテナンスが重要となります。その際に、インプラント体と上部構造(アバットメントと人工歯)を取り外し、連結部分をキレイに清掃してから再度取り付ける「オーバーホール」...
電動歯ブラシと手磨きの違い
電動歯ブラシと手磨きの違い
私たちの毎日の食後などにおこなう歯磨き その歯磨きで使用する歯ブラシにも現在、多くの種類があります。 その中でも大きく分けて、歯ブラシには手磨き歯ブラシと電動歯ブラシがあります。手磨き歯ブラシの方が一般的で馴染みのある方は多いと思いますが、近年では多くの種類の電動歯ブラシが比較的手軽な金額で販売されており、私たちのみじ...
インプラント治療の流れ
インプラント治療の流れ
インプラント治療の一般的な流れ ご自身の歯を失ってしまった場合、現在の歯科医療での治療方法には、入れ歯、ブリッジ、そしてインプラントがあります。その中でもインプラント治療は審美的にも優れ、噛み心地も本物の歯と変わらないなどのメリットもあり、近年人気の高い治療法です。 しかしインプラント治療は外科手術が必要となるため、ほ...
顎骨骨髄炎とは 
顎骨骨髄炎とは 
顎骨骨髄炎とは、口腔内の歯周病原細菌による「辺縁性歯周炎」や「根尖性歯周炎」が、顎骨内の骨髄にまで進行することで、顎骨骨髄部が炎症を起こす感染症のことです。特に頭頸部の悪性腫瘍(癌)に対する放射線治療後に、顎の骨の細胞活性機能が低下してしまい、感染を引き起こす骨髄炎を「放射線性骨髄炎」と呼びます。顎骨骨髄炎は、様々な症...