世界における歯科治療の歴史

毎日の私たちの生活の中において、虫歯の治療などで歯科医院を訪れるということは、ごく当たり前のことになっています。さらに、近年は歯科医院はコンビニの数よりも多いといわれているほど充実した数の歯科医院があり、大分県にも沢山の医院があります。

日常にも密接に関わっている歯の治療ですが、現在のような歯科医療技術がない時代もありました。世界における歯科医療はどのような時代を経て発展していったのかをご説明致します。

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世界における初期の歯科治療

今からかなり遡ること旧石器時代には、すでに歯を抜いたり、削ったりする習慣があったようです。この習慣には宗教的な意味合いや他の部族への威嚇的理由もあったようです。

歯科治療の始まりは、生活も食事事情も苦しかった古代エジプト人たちの文化で始まったといいます。

古代エジプトの歯科治療

古代エジプトの人たちの食事は、主に穀物だったのですが、安全なパンを作るのに今のようにきちんと殺菌された質の良い原料や、良い家庭用品もなかったため、さまざまな金属や鉱物、体に悪影響を起こすものがパンの中に入り込んでしまい、虫歯など多くの歯のトラブルを引き起こしていました。古代エジプト人は食べ物から砂を取り除くことはほとんど不可能だったため、口内の重大な健康問題の原因となっていました。

世界初の歯科医の記録は紀元前2660年頃まで遡り、ジョセル王の主席歯科医で内科医だったHesyreという人物だったといいます。この時代の主な歯科治療は、虫歯になった歯や、歯が欠けたり割れたりしたり、歯茎の炎症や膿などに対して、痛みを和らげるためにハチミツやハーブなど植物や金の詰め物をすることだけでした。この時代に行われた治療は、麻酔などもないため、どれも耐えがたい痛みを伴っていました。

またこの時期から、義歯が作られていた可能性があるケースがいくつか見つかっています。古代エジプト人は、初めて金歯を使い、さらに穴をあけてゴールドのワイヤーで歯の間を縫うようにして複雑なスタイルを作りあげていました。これは歯をあるべき位置で固定するためか、美容のためだったのではないかといわれています。

さらに、今では当たり前のような処置ですが、歯に穴をあける治療法が生まれました。現代のように電動ドリルや細かい調整の出来る道具がなかったため、弓に似ている道具で矢をつがえるのではなく、弦が鋭いスパイクや青銅の支柱に結びつけられただけのものを使っていたのではないだろうかと、発見されたものから予測されています。弦がスパイクのまわりに巻きつけられているので、まるでチェロを弾くように弓を前後に動かすと、スパイクが回転して対象物に穴があくのです。歯に穴をあけるやり方として決して簡単にできる方法ではなく、想像できない痛みを伴う治療法でした。

その後、エジプトでは文化や医療が進むにつれ、社会に蔓延していた歯の問題を解決するために、精密で複雑な道具がますます広く求められるようになり、この頃からペンチやメスなどの道具を完備した本格的な歯科治療が行われていきます。さらにエジプト人は義歯や脳外科手術など、さまざまな手術を行うのに必要な道具や知識を持っており、歯に穴をあけてきれいにしたり、形の悪い歯を取り除いたりしていました。歯科治療は徐々に確実に複雑になっていき、痛みを我慢できる程度ではありますが、現在の歯科治療にも似た治療になっていきました。

古代・中世ローマの歯科治療

紀元前700年までには、古代ローマではイタリアの先住民であるエトルリア人は、すでに動物の歯や金の詰め物を使って、歯のインプラントを行っていました。彼らは金属を温めてハンダ付けして、剝き出しの神経や空洞を埋め、食べかすなどにさらされる歯髄や末端神経の痛みを抑える方法を知っていました。

また、中世の時代に入ると歯科治療に関して、正確な知識や歯科治療のための道具にかなり進歩が見られた歴史の転換期になり、虫歯の予防対策、歯科衛生という意識が生まれました。さらにホワイトニングの意識も生まれ、白い歯にするために多くの調合薬が作られ、歯科衛生ケアの大きな部分を占めていました。

その後、時代が進むにつれて予防や抜歯だけでは歯科治療は追いつかなくなってしまい、歯や骨の問題を引き起こしてしまいます。その理由は、貿易が世界に広がったことにより「砂糖」が簡単に手に入るようになったからです。

14~15世紀までには、歯医者はブリッジや総入れ歯ができる「美容外科医」となっていました。レオナルド・ダ・ヴィンチの影響もあり、解剖学が発展したことにより歯やお口の解剖学も同じく発展しました。この頃には、唇の手術や歯の再植や、失われた歯に対して隣に残された歯と金のワイヤーを使って、牛の骨を歯の形に似せて成形した人工歯を装着する治療法がありました。現在のブリッジの様な治療です。さらに、当時義歯として使える材料は牛の骨だけではなく、なんと死者の歯も使用していました。中世は数々の戦いによって多くの死者を出していました。そのため、複数の遺体から歯を抜いて、患者の歯に合った義歯を作るのにより適したものを選ぶこともあったのです。

近代ヨーロッパの歯科治療

フランス近代歯科医学の祖といわれるピエール・フォーシャルが歯科治療に関する医学書を1728年に出版したことにより、歯科医学が体系化され、歯科医学が発達していく基礎となりました。それ以降、歯科医の家系でのみ伝えらていた歯科医学が、歯科治療を志す人々の間に広がっていくことになります。それが歯科に更なる飛躍をもたらすことになりました。

近代アメリカの歯科治療

1789年に起きたフランス革命の影響で、アメリカへフランスの歯科医師の移住が進み、1840年にアメリカで初の歯科学校、ボルチモア歯科医学校が開講されました。アメリカは、それまで歯科医の数が少なく、歯科医でない人が歯科治療を行なっていたのですが、これ以降改善されていくことになります。

また、大勢の歯科医師がアメリカに移った影響で、歯科治療の技術の中心がアメリカに移っていくことにもなりました。さらに、1844年には笑気ガスを使った全身麻酔下での抜歯が行われ、1846年にはエーテルを使った麻酔で口腔外科の手術が行われました。

様々な歯科医療器具の開発

英国では歯科治療にとって画期的である、エアタービンを内蔵し高速回転で歯を削るハンドドリルや、歯石を取り除く超音波スケーラーが開発されたことにより、効率よく虫歯を削り、歯石を取り除くことが出来るようになりました。

さらに1905年にドイツの化学者がNovacainという麻酔薬を開発に成功しました。それ以降、さまざまな麻酔薬が作られてきました。そのおかげで麻酔の効果で治療の痛みを無くすことが出来るようになりました。

これまでは、痛みのあまり抜歯するしか方法がなかった歯でも、痛みを感じることなく安全に、歯の神経を取り除く治療をすることが可能となりました。麻酔薬の開発は、歯を残すことにも繋がっていったのです。

しかし、歯を削り詰め物をしても、詰めたところと歯の隙間から虫歯が再発して、より深い虫歯になってしまったり、神経をとった歯自体が弱くなってしまい、欠けたり割れたりすることが起こるようになりました。

歯科治療の歴史

歯科治療は私たちの歴史と寄り添いながら共に時間を経てきました。歯は食べ物を食べる上で、最も重要である噛み砕いた物を飲み込むという役割を持っています。

さらに、舌でいつでも触れたり、痛みを感じることから、体の中で特に敏感な場所だからこそ、歯科治療は長い歴史を持っているのです。

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