歯と認知症の関係

近年、高齢者の認知症や認知機能の低下が問題視されています。認知症や認知機能の低下には、様々な要因があるといわれていますが、その中でも歯や口腔内の機能が認知症に大きく関係しているといわれています。認知症の予防はもちろん、進行を抑えるために口腔内の健康が重要なのです。高齢になるにつれて、口腔内には様々な問題が起こります。最も大きな問題は歯周病です。

歯周病と認知症の関係

歯周病とは、歯垢や食べカスなどが口腔内に残ってしまうことで、歯と歯茎の隙間に細菌が溜まってしまい、歯茎が歯周病菌に感染することで炎症を起こしてしまった状態のことをいいます。歯周病は初期段階では痛みや自覚症状がほとんどないため、歯周病に気づかずに、違和感を感じ始めた頃には既に重症化している場合が多いのです。進行すると歯茎や歯槽骨を溶かしてしまいます。それにより土台を失ってしまった歯は次第にぐらつくようになり、最終的に歯が脱落してしまう危険な病気です。日本人が歯を失う原因の約半数が歯周病だといわれています。さらに、歯周病などによって歯を失ってしまうと、歯の根の周りにある歯根膜(クッションのような組織で、歯が噛む際の衝撃を脳に伝え、歯根膜にある血管から血液を脳に送る機関)へかかる圧力が減少するため、脳に送り込まれる血液の量も減少してしまいます。そのため脳への刺激が減ってしまうことで、脳機能の低下してしまい、やがて認知症へと繋がるのです。

歯周病は歯を失うというだけではなく、歯周病菌が歯の神経である歯髄にまで進行してしまうことで歯髄に通っている血管の中に歯周病菌が入り込んでしまうことで、全身に菌が進行してしまいます。その結果、糖尿病を発症・悪化させたり、誤嚥性肺炎や血管性の病気、メタボリックシンドロームなどの様々な病気の原因や悪化させる要因となってしまうのです。認知症もその一つです。実際に歯の数と認知症の発症率について、脳が健康な方の歯の数は平均で約19本で、認知症の疑いがあると診断された方の歯の数は平均で約9本であったという調査結果も出ています。このことから、残っている歯の数が少なければ少ないほど認知症になりやすいことが明らかになったのです。

認知症の中でもっとも多いアルツハイマー型認知症

認知症の原因となる病気はいくつもありますが、もっとも患者が多いのがアルツハイマー病です。短期記憶などをつかさどる脳の海馬などを中心に、大脳全体に萎縮がおこる病気です。

歯周病とアルツハイマー型認知症との関連性を示唆する、新たな動物実験結果を日本大学歯学部の研究チームが発表しており、歯周病菌が歯髄の血管から脳に進行してしまうと、脳内で歯周病菌が作り出す毒素も増加していくため脳の炎症も強くなり、免疫細胞が活性化して脳の神経細胞を攻撃していくことで神経伝達に異常が起こっているといった、歯周病菌がアルツハイマー病を進行させていることが分かりました。アルツハイマー型認知症の原因はまだ完全に解明されていませんが、体内で発生する酸化ストレスが細胞や組織に悪影響を及ぼしているのではないかともいわれています。日本大学歯学部の研究チームは、歯周病の原因菌によってつくられる「酪酸」という物質を、健康なラットの歯茎に注射をおこない、6時間後に調べた結果、脳内の各部位で酸化ストレスが上昇しており、その中でも記憶をつかさどる「海馬」でのストレスが顕著に見られていたことが分かりました。さらに、アルツハイマー型認知症の脳神経細胞内で過剰に増える「タウ」というたんぱく質も通常のラットに比べて約4割増加していました。ラットの歯茎に注射した『酪酸』は、歯周病患者の歯周ポケットでも健康な歯の方の10〜20倍も見つかっています。健康であれば歯周ポケットにとどまっているのですが、歯茎が炎症を起こしてしまったりすると、歯茎の組織から血管に入り込んで全身を巡ります。それが長期間つづくと脳に悪影響を与える可能性は十分に考えられます。そのため歯周病は、できるだけ早期の段階で治療することが重要なのです。

8020運動と予防歯科

8020運動とは、1989年に厚生労働省が80歳になっても、自分の歯を20本以上残すことを目標に掲げた計画です。

20本という理由は、親不知を除く28本の歯のうち20本以上が残っていれば、食事の種類など関係なく、しっかりと噛み砕くことができるからといわれています。歯が抜けてしまうのは歳をとったからと考えている方が多いようですが、適切なケアや治療をきちんとおこなうことで、歯を健康に保つことは可能です。そのためにも虫歯や歯周病になってからの歯科治療ではなく、虫歯や歯周病にならないための予防歯科をおこなうことはとても大切です。

8020運動が可能となるためにも、大分県のかかりつけの歯科医院での定期的な歯のクリーニングやメンテナンス、そしてご自身での正しい口腔ケアをおこないましょう。

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