インプラントと骨結合

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骨結合型インプラントについて

骨の中に金属などを埋め込むことを総称してインプラントと呼びます。しかし、私たち人間の体は自分以外の細胞や人工物が体内に入った場合には激しい拒絶反応を起こし異物を排除しようとします。こういった拒絶反応は私たちの体の免疫系統によってもたらされる自己防衛の能力なのです。そのため過去のインプラント治療の材料として金、サファイア、鉄、ステンレス、アルミニウムなど多様な素材が使われてきましたがどれも良好な結果が得られずに淘汰されていきました。では何故、現代のインプラントで使われる人工歯根は顎の骨に埋めこまれたまま排除されずに天然の歯に近い状態で長く使うことができるのでしょうか?それは1965年にスウェーデンの学者のブローネマルク教授が開発したチタン製のインプラントが驚くべき成果を挙げた事が始まりです。

最初に治療を受けた患者さんは現在も安定した状態で使われています。10年以上に渡って機能しているインプラントは96%以上であり、症例としては98.5%にも及びます。この生存率の高さはチタンが骨と結合するという特質を持っていたからであり、この特質性によりインプラントは「骨結合型インプラント」へと移行していきました。埋入されたチタン製インプラント体は骨と直接結合する事で歯の根と同様の役割を果たし、骨とインプラントがしっかりと結びつくことで天然の歯と同じように噛む事ができるようになるのです。

インプラント体と骨が結合する事をオッセオインテグレーション(osseointegration)と言います。このオッセオインテグレーションはすぐに得られるものではなく徐々に結合していくものです。埋入後3~4週ほどで安定してきますが、しっかりと結合するのはおよそ三ヶ月後であると言われています。現在ではより早く結合する技術加工が発達してきたため骨結合までの期間は徐々に早まってきています。

チタンが変えたインプラントの歴史

そもそも「失われた歯の代わりに人工の歯を使う」というインプラントの元となった歯科治療法は紀元前から行われていたと云われています。古代では人工歯に象牙や宝石などの素材を治療に使用してきましたが、これらの素材は人体の拒絶反応のために骨と結合することはなく埋め込んでもすぐに脱落してしまい実用的な歯としては使い物になりませんでした。

その後は実用的な人工歯の素材として金や鉄、ステンレスやアルミニウムなどの金属類が使われるようになりましたが金属は口腔内の体液でイオン化して溶け出してしまい金属アレルギーを引き起こす事からインプラント技術は一向に進歩しませんでした。しかし1960年代になってチタン製のインプラントが登場したことでインプラント技術は飛躍的に進歩します。現在、私たちが拒絶反応によりインプラントを脱落させることなく安全にそして長期間人工歯が使えるようになったのはチタンという素材のおかげなのです。

チタンの特徴

チタンは次のような特徴を持つ金属で医療用から工業用まで幅広く使われている素材です

  • 耐食性が強い
  • 軽く加工がしやすい
  • 生体親和性が高い
  • 骨と結合する

チタンという金属は他の金属にはない生体親和性を持ち、酸素と結びつくことで表面に強固な不動態皮膜を瞬時に形成するので人体にとって危険な金属アレルギーを起こすことがありません。

そのためインプラントとして骨に埋め込んでも害が無いのです。骨に埋め込んだチタンは異物として認識されること無くあたかも折れた骨が再生して結合をするようにチタンに新しくできた骨が張り付き成長しインプラントは骨としっかり結合していくのです。このようなチタンと骨の結合は最近の研究でチタンの表面が微少に粗い方がより結合しやすいことがわかっていて今ではより強力な結合力のあるインプラントが開発されています。そのため現在のインプラント成功例は全体の約97%と、高い治療効果が出るようになっています。

現代におけるインプラント治療

現在のインプラント治療において骨結合は絶対条件であり、そのためにはチタン製インプラントを用います。それでも残念ながらインプラント治療の成功率は100%ではありません。部位によっても異なりますが成功率はおよそ97%だと言われており失敗というのは骨と結合しないという事です。

口腔内インプラント治療も例外ではなく、身体がインプラントを異物だと判断すれば骨と結合しないのです。では、異物だと判断させない為にはどうすればよいのでしょうか?それは無菌的に処置をするということです。

具体的には無菌室に近い手術を行なう事や、使い捨ての器具を使用する事などとなります。また、インプラント体はチタン製のものが主流ですが中にはチタンの周りをハイドロキシ・アパタイト(HA、歯や骨の成分)でコーティングしたタイプのものもあります。それらは、HAインプラント、HAコーテッド・インプラントなどと称され、純チタンのインプラントと区別されることがあります。インプラントとHAの間に生体のカルシウム等が介在することからHAインプラントの骨結合はバイオインテグレーションとも呼ばれます。このようなインプラント体を用いる事を検討されても良いかもしれません。

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